2014年3月31日月曜日

第22回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)


平成262月に行われた第22回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖に該当する問題の解答と解説をまとめました。







●問15.腹膜を形成する上皮で正しいのはどれか。≪消化器系≫
1.移行上皮
2.円柱上皮
3.線毛上皮
4.扁平上皮




解答
4

解説
腹膜は胸膜、心膜とともに漿膜という滑らかな表面をもつ単層扁平上皮よりなる。






●問16.発生について正しいのはどれか。≪生殖器系≫
1.受精は子宮内で起こる。
2.着床は胚盤胞の段階で起こる。
3.受精後4週目以降を胎児と呼ぶ。
4.胎児の臍動脈と母体の子宮動脈はつながっている。




解答
2

解説
1.受精は卵管の外側1/2にある卵管膨大部で起こる。
2.卵子は受精後に受精卵となり分裂をはじめる(卵割)。受精後4日で1632細胞となり桑の実に似た桑実胚となり子宮に到着する。桑実胚はさらに卵割を続け、内部に隙間ができて袋状となり胞胚(胚盤胞)になる。受精後57日で胞胚(胚盤胞)が子宮内膜に付着することで着床がおこる。
3.受精後8週目以降を胎児と呼ぶ。
4.母体の子宮動脈は胎盤内の絨毛間腔につながる。胎児の2本の臍動脈と1本の臍静脈は絨毛間腔の中に絨毛を形成し、ここで物質の栄養物質の交換を行う。この栄養交換は母体の血液と胎児の血液は毛細血管と絨毛の上皮を通して行われ、両者の血液は決して直接混ざり合うことはない。



●問17.頭蓋の骨で茎状突起があるのはどれか。≪運動器系/骨格≫
1.頬骨
2.上顎骨
3.側頭骨
4.蝶形骨




解答
3

解説
側頭骨の岩様部の下面から前下方に向かって茎状突起が伸びる。茎状突起は茎突舌骨筋の付着部となる。また茎状突起の基部には茎乳突孔が開く。ここに内耳孔から続く顔面神経管が開口し、顔面神経が通る。



●問18.腹部の筋について正しいのはどれか。 ≪運動器系/体幹≫
1.浅鼠径輪は鼠径靭帯の下に開く。
2.白線は腹直筋鞘が正中で合してつくられる。
3.精巣挙筋は外腹斜筋の最下端部の筋束よりなる。
4.鼠径靭帯は内腹斜筋の停止腱膜の肥厚したものである。




解答
2

解説
1.浅鼠径輪は鼡径靭帯の上縁で恥骨結合のすぐ上方に位置する。鼠径管の腹壁側の出口にあたる。
2.白線は腹直筋鞘が正中で合してつくられる。
3.内腹斜筋の最下端部の筋束は精索を包み込むように下降して精巣挙筋となり、腰神経叢からおこる陰部大腿神経の支配をうける。
4.鼡径靭帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靭帯となって、上前腸骨棘と恥骨結合との間に張ったもの。



●問19.上肢の伸筋支帯下の6つの管と通過する腱との組合せで正しいのはどれか。≪運動器系/上肢≫
1.第1管――――長母指伸筋の腱
2.第2管――――長母指外転筋の腱
3.第4管――――短母指伸筋の腱
4.第5管――――小指伸筋の腱




解答
4

解説
伸筋支帯と橈骨・尺骨との間には、伸筋の腱を通す6つのトンネルがある。各トンネルの間では伸筋支帯の一部が骨に密着して、となり合う腱トンネルを仕切る区画(腱区画)をなす。伸筋腱はそれぞれの腱区画ごとに個別の腱鞘に包まれており、運動時の摩擦を軽減させる。
1トンネル:長母指外転筋と短母指伸筋
2トンネル:長・短橈側手根伸筋
3トンネル:長母指伸筋
4トンネル:総指伸筋と示指伸筋
5トンネル:小指伸筋
6トンネル:尺側手根伸筋



●問20.腸脛靭帯について正しいのはどれか。≪運動器系/下肢≫
1.下前腸骨棘に付着する。
2.大殿筋が停止する。
3.大腿の内側面にある。
4.下腿筋膜が肥厚したものである。




解答
2

解説
腸脛靱帯は大腿の外側面で大腿筋膜が肥厚したもので、腸骨稜から下に向かって垂直に走り脛骨の外側顆に至る。帯状の強力な靭帯である。後方から大殿筋が、前方から大腿筋膜張筋が停止する。この靭帯の緊張により膝関節が伸展位で固定され、体幹の直立位が維持される。



●問21.喉頭の軟骨のうち対をなすのはどれか。≪呼吸器系≫
1.喉頭蓋軟骨
2.甲状軟骨
3.披裂軟骨
4.輪状軟骨




解答
3

解説
喉頭の骨組を構成する甲状軟骨、輪状軟骨、喉頭蓋軟骨は人体にひとつずつ存在する。甲状軟骨が盾状に前面をおおい、その下に指輪の形をした輪状軟骨がある。甲状軟骨の裏側には喉頭蓋軟骨が付着し、舌のように後上方に伸びる。
披裂軟骨は左右1対存在する三角錐状の小さな軟骨で、輪状軟骨の後上縁の左右に乗るように位置する。声帯を構成し、発声に関わる。



●問22.腎臓について誤っているのはどれか。≪泌尿器系≫
1.脂肪被膜で包まれる。
2.右腎は左腎より低い。
3.腎小体は糸球体とボーマン嚢からなる。
4.傍糸球体細胞からアルドステロンが分泌される。




解答
4

解説
1.腎臓は副腎とともに共通の脂肪皮膜で包まれ保護される。
2.上方に肝臓があるために右腎の方が左腎より1/2腰椎分低い。
3.腎小体は毛細血管が糸玉状に集まった糸球体と、それを包む上皮性のボーマン嚢という薄い袋からなる。
4.傍糸球体細胞は尿の電解質濃度に反応してレニンというホルモンを分泌して血圧を上昇させ、原尿の産生を増やす。








●問23.顎動脈の枝はどれか。≪運動器系/頭頸部、循環器系≫
1.中硬膜動脈
2.顔面動脈
3.後頭動脈
4.舌動脈




解答
1

解説
外頸動脈の分枝である顎動脈からは中硬膜動脈や頬動脈のほか、各咀嚼筋への枝や下顎骨への枝、鼻腔や眼窩、口蓋や上顎骨への枝が分かれる。
1.顎動脈からの枝
2.外頸動脈からの枝
3.外頸動脈からの枝
4.外頸動脈からの枝



●問24.上肢の動脈の経路について正しいのはどれか。 ≪運動器系/上肢、循環器系≫
1.橈骨動脈は手根管を通る。
2.腋窩動脈は外側腋窩隙を通る。
3.上腕動脈は内側上腕二頭筋溝を通る。
4.尺骨動脈は上腕骨内側上顆の後ろを通る。




解答
3

解説
1.橈骨動脈は肘窩付近で上腕動脈から分岐し、橈骨に沿って下行し、橈側手根屈筋の橈側の皮下に沿って手の中に入り、浅掌動脈弓および深掌動脈弓という2つの動脈ループを形成する。一部は手首の背側にもまわり、「解剖学的嗅ぎタバコ入れ」を通過する。手根管には主に長母指屈筋、浅指屈筋、深指屈筋、正中神経が通る。
2.腋窩動脈は第1肋骨の外側で鎖骨下動脈から移行し、腋窩の中央から上腕二頭筋の内側縁へ向かう。大円筋と小円筋、上腕三頭筋長頭によって構成される外側腋窩隙には腋窩神経が、内側腋窩隙には肩甲回旋動脈がそれぞれ通過する。
3.上腕動脈は上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を肘窩に向かって縦走する。
4.上腕動脈は上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を下行し、正中神経とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に入り、橈骨動脈と尺骨動脈に分かれる。上腕骨内側上顆の後ろを通るのは尺骨神経である。



●問25.下大静脈に直接注がないのはどれか。 ≪循環器系≫
1.肝静脈
2.腎静脈
3.脾静脈
4.腰静脈




解答
3

解説
下大静脈は下半身の静脈の本幹である。第5腰椎の前で左右の総腸骨静脈が合流して始まり、途中に腰静脈や腎静脈、肝静脈などを受けながら腹大動脈の右側を上行する。
脾静脈は、上腸間膜静脈、下腸間膜静脈とともに門脈に注ぐ。



●問26.内包が通るのはどれか。 ≪神経系≫
1.尾状核とレンズ核の間
2.淡蒼球と被殻の間
3.被殻と前障の間
4.前障と島の間




解答
1

解説
内包は運動野から下行する線維と視床から各種の感覚野へ上行する線維とがつくる投射線維束の集まりで、視床と大脳基底核の間にはさまれる。大脳基底核では尾状核とレンズ核(被殻と淡蒼球)の間を通過する。



●問27.舌咽神経と関連するのはどれか。 ≪神経系≫
1.毛様体神経節
2.翼口蓋神経節
3.顎下神経節
4.耳神経節




解答
4

解説
設問の神経節はすべて脳神経の副交感神経の神経節である。
1.中脳の動眼神経副核から起始した節前ニューロンは、動眼神経に混ざって眼窩にはいり、毛様体神経節で戦後ニューロンに代わる。節後ニューロンは眼球内に入り、毛様体筋と瞳孔括約筋を支配する。
2.顔面神経は大錐体神経として頭蓋底を走った後、蝶形骨の翼突管を通って翼口蓋窩に達し、ここの翼口蓋神経節で節後ニューロンに交代する。節後ニューロンは涙腺や鼻粘膜の腺に分布する。
3.顔面神経は鼓索神経として中耳を横断した後、下顎神経の枝(舌神経)に合流し、舌の下方の顎下神経節で節後ニューロンに交代する。節後ニューロンは舌下泉、顎下腺に分布する。
4.延髄の下唾液核から起始した節前ニューロンは舌咽神経に混ざって鼓室神経と小錐体神経を経由した後、耳神経節で節後ニューロンに交代する。節後ニューロンは耳下腺に分布する。



●問28.腕神経叢の後神経束から分かれるのはどれか。 ≪運動器系/体幹・上肢・頭頸部、神経系≫
1.横隔神経
2.長胸神経
3.胸筋神経
4.胸背神経




解答
4

解説
1.横隔神経は頸神経叢からの枝である。第35頸神経から起こり前斜角筋の前面を下行し、鎖骨下動脈と静脈の間を通って胸腔に入る。胸腔では肺門の前方で胸膜と心膜との間を下行して横隔膜に達する。
2.長胸神経は第57頸神経根部の後面から起こり、神経叢の最も背面をまっすぐに下行し、腋窩の内側壁である前鋸筋の表面に分布する。
3.内側・外側胸筋神経は正中神経ワナよりも近位で外側神経束と内側神経束の交通枝がつくった小ループ(胸筋神経ワナ)から分枝し、腋窩の前壁をなす大胸筋と小胸筋を支配する。
4.胸背神経は腕神経叢の後神経束から分枝し、広背筋を支配する。



●問29.腰神経叢の枝で筋裂孔を通るのはどれか。≪運動器系/下肢、神経系≫
1.陰部大腿神経
2.外側大腿皮神経
3.腸骨下腹神経
4.閉鎖神経




解答
2

解説
筋裂孔を通るのは大腿神経と外側大腿皮神経である。


             
30.眼について正しいのはどれか。≪感覚器系≫
1.黄斑の中央部を視神経円板という。
2.水晶体と虹彩の間の空間を前眼房という。
3.角膜と強膜の境界部にシュレム管がある。
4.網膜の色素上皮層は単層円柱上皮よりなる。




解答
3

解説
1.黄斑の中央部を中心窩という。物を注視するときに焦点の合う場所で、視力の最も良いところである。視神経円板(視神経乳頭)は黄斑の約4mm内側に存在し、網膜上の視神経が出ていくややくぼんだ部分である。視細胞が存在しないため光を感じない。
2.角膜と虹彩の間の空間を前眼房という。
3.角膜と強膜の境界部には強膜静脈洞(シュレム管)がある。
4.網膜の最外層にある色素上皮層は単層立方上皮よりなる。





<参考文献>



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