2014年5月28日水曜日

七表八裏九道の脈


七表八裏九道の脈について語呂覚えとともに『東洋医学概論』から抜粋しました。






『脈論口訣』の中で、基本の脈状を組み合わせて二十四にまとめられている。その中から、表の脈(陽脈)として七脈、裏の脈(陰脈)として八脈、どちらにも属さない脈として九脈に分類した。


●七表の脈:浮脈、芤脈、滑脈、実脈、弦脈、緊脈、洪脈

語呂覚え:不幸確実現金乞う


●八裏の脈:微脈、沈脈、緩脈、弱脈、濡脈、濇(渋)脈、遅脈、伏脈

語呂覚え:美人患者難色、血を吹く


●九道の脈:結脈、虚脈、長脈、動脈、細脈、短脈、牢脈、促脈、代脈

語呂覚え:結局丁度、細く短いろうそく代






臨床上、実際に遭遇する頻度の高いものは「頻度の高い脈象の脈形と主病」のページを参照。


<参考>

古代鍼灸法:刺法

古代鍼灸法の刺法について「東洋医学概論」の内容を抜粋しました。語呂覚え用の言葉ものせておきます。





●九刺(九変に応ずる刺法)

語呂覚え:球史(九刺)に残る遠藤氏、有志退職分ラッキー(ケィ)も最高。

遠道刺
(えんどうし)
病が上(顔面、頸部や体幹部、六腑など)にあるとき、毫鍼で膝の周囲やその下にある穴(主として下合穴)を刺す。病所より遠く離れた下肢に刺すので遠道刺という。
輸刺
(ゆし)
五臓の病のとき、毫鍼、員鍼、鍉鍼などで手足の末端近くの輸穴(滎・兪・原穴)を刺す。輸穴を刺すので輸刺という。
大瀉刺
(だいしゃし)
大膿を鈹鍼で瀉す。大いに膿血を瀉すので大瀉刺という。
分刺
(ぶんし)
毫鍼・員鍼で分肉の間を刺す。分肉に刺すので分刺という。
絡刺
(らくし)
絡脈が病んだとき、毫鍼や三稜鍼で血絡を浅く刺して瀉す。絡脈に刺すので絡刺(刺絡)という。
経刺
(けいし)
経脈が病んだとき、毫鍼で経脈上の反応(結絡、経分)にやや深く刺す。経脈に刺すので経刺という。
毛刺
(もうし)
皮膚の浮痹(表在性の知覚異常や神経痛)のとき、鑱鍼(ざんしん)や毫鍼で皮膚のごく浅いところを刺す。皮毛に刺すので毛刺という。
焠刺
(さいし)
燔鍼(=焼き鍼のこと。大鍼を熱したもの)で、痹とくに筋痹(筋がひきつって痛い、痙攣するなど)のとき、圧痛点を治療点として刺す。(「焠」は焼き鍼)
巨刺
(こし)
経脈が病んでいるとき、左側に症状があれば右側を、右側に症状があれば左側を刺す。上記の経刺を行う。巨はモノサシ、サシガネのことで、全体(左右)のバランス調整の意。



●十二刺(十二経に応ずる刺法):主として毫鍼を用いる

語呂覚え:坊さん、フグ食べ、院、崩壊、胆兪を採用、直鍼刺

傍鍼刺
(ぼうしんし)
経過が長く同じ部位の痹のとき、痛みの中心に一鍼、そのすぐ傍らに一鍼刺す。
贊刺
(さんし)
廱腫(できもの、はれもの)のとき、毫鍼・鋒鍼で何度も繰り返し浅く刺し出血させる。贊は助けるの意。廱腫をしぼませて助ける。
浮刺
(ふし)
肌肉がひきつって冷えるとき、その傍らに斜めに刺してこれを浮かすようにする。
偶刺
(ぐうし)
心痹(胸部が痛み、強い動悸を感じたりする)のとき、背部と胸部の圧痛・反応点を探り、前後から一鍼ずつ刺す。前後で二本(偶数)なので偶刺という。これが前後配穴、兪募配穴へと発展した。
陰刺
(いんし)
寒厥(足先から冷感が膝や腰まで上り、容易に下痢をする)のとき、左右の内果の後ろの穴(太渓)に同時に刺入する。寒厥は、陰陽では陰証の代表的症候を呈するもので、陰証に刺すので陰刺という。
報刺
(ほうし)
痛むところがあちこち動いて定まらないとき、痛むところを手で追いかけて次々と繰り返し刺す。痛むところを追う際、刺した鍼は抜かずにそのままとする。報は繰り返す意。
恢刺
(かいし)
筋痹で筋がひきつるとき、筋にまっすぐ刺入し、のち鍼を左右前後に方向を変えたり揺り動かしたりして筋を緩める。恢は大きい、緩いの意。
短刺
(たんし)
骨痹(骨髄が損なわれ、骨痛み体重く、四肢重く挙げにくい)のとき、鍼を揺すりながら深く刺して骨に至らせ、鍼で骨を上下にこするようにする。短は急迫の意で、頻々と揺すり、かつ骨に迫るので短刺という。
輸刺
(ゆし)
気の働きが盛んで熱のあるとき、まっすぐに深く刺しまっすぐに抜いて熱を瀉す。取穴は少なくする。輸は輸送の意で、深部の熱を外に運ぶので輸刺という。
斉刺
(せいし)
寒気・痹気(冷え・痛み)の範囲が狭く深部にあるとき、その中心に一鍼、すぐ両側にそれぞれ一鍼ずつ一直線に並ぶように刺す。斉はひとしくそろうの意。
揚刺
(ようし)
寒気の範囲が博(ひろ)く大きいとき、その中心に一鍼刺し、四隅から中心に向かって水平に近い角度でこの寒気を浮かすように刺す。寒気を浮揚させるので揚刺という。
直鍼刺
(ちょくしんし)
寒気の浅いとき、皮膚をつまんで引っ張りこれを刺す。直ちに刺すので直鍼刺という。






●五刺(五臓に応ずる刺法)
主として毫鍼を用いる。五臓(肝・心・脾・肺・腎)に関連する部位・病証に適応する五種の刺法。五行説による人体認識(五主)に基づいている。

語呂覚え:かんぴょうごはん言うね。

関刺
(かんし)
筋痹のとき、出血しないように慎重に関節部の筋に深く刺して緩め、痛みを取る。関節部に刺すので、関刺という。
刺す対象は筋であり、筋は肝の主るところなので、肝に応ずる。
関刺をまた、淵刺(えんし)・豈刺ともいうが、同時発生的に同じ方法が異なる地域で行われ。そのため呼称もいろいろ存在したのであろう。
豹文刺
(ひょうもんし)
浅くたくさん刺して脈に当て、血をにじませて経絡の血の滞りを取る。出血の様が豹の毛皮の紋のようなので、豹文刺という。
刺す対象は血脈であり、血脈は心の主るところなので、心に応ずる。
合谷刺
(ごうこくし)
肌肉の痹(肌肉がしびれ痛み、だるい)のとき、皮下の肉に鶏の足のように3本の鍼を開いて斜めに刺す。3本が谷間の深いところのようなので、合谷刺という。
刺す対象は肌肉であり、肌肉は脾の主るところなので、脾に応ずる。
半刺
(はんし)
毛を抜くように、肉を傷つけずにきわめて浅く素早く鍼を刺し、素早く抜いて、皮気(皮膚表面の症状)をとる。刺したかどうかわからぬくらい浅いので、半刺という。
刺す対象は皮膚であり、皮膚は肺の主るところなので、肺に応ずる
輸刺
(ゆし)
骨痹のとき、まっすぐに深く刺して骨に至らせ、まっすぐに抜く。輸は至るという意味で、深く骨に至るので輸刺という。
刺す対象は骨であり、骨は腎の主るところなので腎に応ずる。


●三刺
陰陽の邪気を出し、水穀の気の循りを良くする方法。浅いところから深いところまで三度刺すものである。
一刺目:浅く皮を絶ち、陽邪を出し、血気を将来する。
二刺目:少し深く刺して肌肉に到らせ、陰邪を出す。
三刺目:更に深く分肉の間に入れて、穀気を将来する。


<参考>

2014年5月19日月曜日

頻度の高い脈象の脈形と主病





名称
脈形
主病
浮脈
軽く按じれば拍動が指に感じられ、重く按じれば感じ方が弱くなるが、空虚ではない
表証、虚証
沈脈
軽く按じても感じられず、重く按じれば得られる脈
裏証(裏実、裏虚)
遅脈
一呼吸に三拍以下、緩慢な脈
寒証(実寒、虚寒)
数脈
一呼吸に六拍以上、速い脈
熱証(実熱、虚熱)
滑脈
脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れ、まるで盆に珠をころがしたような脈
痰飲、食滞、湿証
濇脈
ざらざらとして、渋滞したような脈
血瘀、血虚
虚脈
浮、中、沈でともに拍動が細く、しかも消極的で力のない脈
虚証
実脈
浮、中、沈があり、ともに拍動が大きく、しかも積極的で力がある脈
実証
弦脈
弾力に富み、琴の弦を按じるような脈
肝胆病、痛証、痰飲
緊脈
緊張していて、張りつめた藁を按じるような脈(弦脈に似る)
実証、痛証
濡脈
浮にして細軟の脈
湿証、虚証
細脈
糸のように細いが、指にしっかりと触れる脈
血虚、陰虚
結脈
時に一つ止まるが、止まり方は一定していない脈、緩慢な脈
血瘀、積聚、寒証
代脈
規則的に一つ止まり、間欠時間がわりと長い脈
臓気の衰退、痛証





<参考>