2014年7月30日水曜日

第21回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)


平成25年(2013年)に行われた第21回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖に該当する問題の解答と解説をまとめました。








●問15.神経膠細胞で中枢神経の髄鞘形成に関与するのはどれか。≪神経系/中枢神経≫≪人体の構成・神経組織≫
1.上衣細胞
2.小膠細胞
3.星状膠細胞
4.希突起膠細胞




解答
4

解説
1.上衣細胞は単層立方上皮の神経膠細胞で、脳室の内面をおおう。左右の側脳室・第3脳室・第4脳室の一部において、脳内に突出した毛細血管網を覆って脈絡叢の形成に関与する。ここから脳脊髄液が分泌される。
2.小膠細胞はマクロファージと同じく食作用を持ち、異物や有害物質の除去にあたる神経膠細胞である。
3.星状膠細胞は中枢神経において、神経細胞と血管との間に介在し栄養の吸収の仲立ちをし、さらに、血液の中を流れる有害物質が脳内へ侵入するのを阻止する血液脳関門の形成に関与する。
4.希突起膠細胞は中枢神経の神経細胞の軸索をぐるぐる巻きにして髄鞘をつくる。末梢神経の髄鞘を形成するのはシュワン細胞。






●問16.新生児の頭蓋において最後に閉鎖するのはどれか。≪骨格/頭顔面部≫
1.大泉門
2.小泉門
3.前側頭泉門
4.後側頭泉門




解答
1

解説
泉門は3つ以上の頭蓋骨が会合する部分に残る結合組織の膜性部である。成長とともに頭蓋骨の骨化がすすむと閉鎖する。
1.大泉門は前頭骨と頭頂骨(冠状縫合と矢状縫合)の間にできる。およそ2歳で閉じるといわれている。
2.小泉門は頭頂骨と後頭骨(矢状縫合とラムダ縫合)の間にできる。生後約3カ月で閉じるといわれている。
3.前側頭泉門は冠状縫合と鱗状縫合の交点で、閉鎖時期は生後6か月~1歳といわれている。
4.後側頭泉門はラムダ縫合と鱗状縫合の交点で、閉鎖時期は生後1歳~16か月といわれている。







●問17.頭蓋で下顎骨が関節をなすのはどれか。≪骨格/頭顔面部≫
1.口蓋骨
2.上顎骨
3.側頭骨
4.蝶形骨




解答
3

解説
側頭骨の下顎窩と下顎骨の関節突起先端の下顎頭は顎関節を形成する。






●問18.仙骨と他の椎骨の部位との組合わせで正しいのはどれか。≪骨格/脊柱・体幹≫
1.横線――――――椎体
2.仙骨管―――――椎間孔
3.正中仙骨稜―――棘突起
4.中間仙骨稜―――横突起




解答
3

解説
1.仙椎の各椎体は癒合することで椎間円板を失い、その結合部は仙骨前面に4本の横線として残る。
2.仙椎の椎孔は癒合して仙骨管をつくる。
3.仙椎の棘突起は連なって正中仙骨稜を形成する。
4.仙椎の椎間関節は連なって中間仙骨稜を形成する。






●問19.上肢の筋で正中神経が通り抜けるのはどれか。≪筋系/上肢≫≪神経系/末梢神経・上肢≫
1.回外筋
2.円回内筋
3.烏口腕筋
4.母指内転筋




解答
2

解説
正中神経は上腕部では上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を縦走し、上腕動脈とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に至る。肘窩では、円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通って深部に入り、尺側手根屈筋以外の前腕屈筋の浅層筋群に筋枝を出す。さらに正中神経の本幹は、浅指屈筋の起始部にある腱弓から深層に進入して、浅指屈筋と深指屈筋の間を走る。ここで、前腕屈筋の深層筋群に至る筋枝と手掌の橈側半への皮枝(手掌枝)を出しつつ手根部に達し、浅・深指屈筋の腱とともに手根管を通って手内に入る。手内では母指球筋に分枝するほか、母指から薬指への皮枝を出す。







●問20.肩甲骨に付着する筋とその付着する部位との組合せで正しいのはどれか。≪筋系/上肢帯・上肢≫
1.棘上筋―――肩峰
2.小円筋―――関節下結節
3.小胸筋―――烏口突起
4.小菱形筋――下角




解答
3

解説
1.棘上筋の起始は肩甲骨棘上窩、停止は上腕骨大結節。
2.小円筋の起始は肩甲骨外側縁、停止は上腕骨大結節
3.小胸筋の起始は第25肋骨、停止は肩甲骨烏口突起
4.小菱形筋の起始は第67頸椎棘突起、停止は肩甲骨内側縁上部








●問21.下肢の筋で大腿骨に付着するのはどれか。≪筋系/下肢≫
1.大腿直筋
2.内閉鎖筋
3.薄筋
4.縫工筋




解答
2

解説
1.大腿直筋の起始は下前腸骨棘、停止は膝蓋骨を経て脛骨粗面
2.内閉鎖筋の起始は閉鎖膜の内面、停止は大腿骨転子窩
3.薄筋の起始は恥骨下枝の前面、停止は脛骨粗面の内側
4.縫工筋の起始は上前腸骨棘、停止は脛骨粗面の内側








●問22.間膜と付着部との組合せで正しいのはどれか。≪消化器系/腹膜≫
1.肝冠状間膜――横隔膜
2.小網―――――脾臓
3.大網―――――空腸
4.腸間膜――――腎臓




解答
1

解説
1.肝冠状間膜は、肝臓を覆う腹膜と横隔膜を覆う腹膜との移行部である。
2.小網は肝臓と胃の小弯および十二指腸の基部の間に張る腹膜。肝臓と十二指腸の間は肝十二指腸間膜、肝臓から胃の小弯部にかけては肝胃間膜とよばれ、肝門から肝臓に出入りする固有肝動脈・門脈・肝管や左・右胃動脈などが通る。
3.大網は胃の大弯側で胃の前後を覆う腹膜が合わさってできる間膜である。大網は胃の大弯から下方に垂れ下がり折れ返って再び上方に向かい横行結腸の表面に付着した後、横行結腸間膜に癒合して後腹壁に達する。大網は前後に2枚ずつの合計4枚の腹膜でできているが、全体が合わさってエプロンのように大弯から垂れ下がる。
4.腸間膜とは、後腹壁を覆う壁側葉から腸管を包む臓側葉へ続き、再び臓側葉から壁側葉へ折れ返って腹膜の2重層をつくっているものをいう。腸間膜は空腸、回腸、虫垂、横行結腸、S状結腸などにみられ、血管や神経が腸間膜中を走行して臓器内へ分布する通路の役目を果たすとともに腸管の運動を制限している。















●問23.ディッセ腔にみられるのはどれか。≪消化器系/肝臓≫
1.クッパ-星細胞
2.ビタミンA貯蔵細胞
3.赤血球
4.胆汁




解答
2

解説
肝細胞索と洞様毛細血管の間の広く開いた部分をディッセ腔といい、ビタミンA貯蔵細胞がみられる。クッパー星細胞は肝細胞索の間を走る洞様毛細血管の壁に存在する大食細胞である。







●問24.心臓の後室間枝と一緒に走行する静脈はどれか。≪循環器系/心臓≫
1.前心臓静脈
2.大心臓静脈
3.中心臓静脈
4.冠状静脈洞




解答
3

解説
心臓の後室間枝は右冠状動脈の枝で、後室間溝(心臓の後面で左右の心室間に沿う溝)を心尖に向かって下行する。
1.前心臓静脈は右心耳と右心房の間から右冠状動脈を乗り越えて分布する。
2.大心臓静脈は前室間溝から冠状溝を走る。
3.中心臓静脈は後室間溝を走る。
4.冠状静脈洞は心臓後面の冠状溝を走り、心臓を走行する大半の静脈からの血液を集め、右心房の後面に注ぐ。






●問25.大腿動脈の枝はどれか。≪循環器系/動脈・下肢・体幹≫
1.内側大腿回旋動脈
2.下腹壁動脈
3.下殿動脈
4.閉鎖動脈




解答
1

解説
1.内側大腿回旋動脈は大腿動脈の枝である大腿深動脈から分かれる。
2.下腹壁動脈は外腸骨動脈の枝である。
3.下殿動脈は内腸骨動脈の枝である。
4.閉鎖動脈は内腸骨動脈の枝である。







●問26.上肢の動脈と走行部位との組合せで正しいのはどれか。≪循環器系/動脈、上肢≫、≪局所解剖≫
1.肩甲回旋動脈――外側腋窩隙
2.上腕動脈――――外側二頭筋溝
3.橈骨動脈――――手根管
4.尺骨動脈――――ギヨン管




解答
4

解説
1.肩甲回旋動脈は内側腋窩隙を通る。
2.上腕動脈は正中神経、上腕静脈とともに内側二頭筋溝を通る。
3.橈骨動脈は橈側手根屈筋の外側に沿って手関節掌側外側から手の中に入る。手根管には長母指屈筋、浅指屈筋、深指屈筋、正中神経が通過する。
4.尺骨動脈は尺骨神経とともにギヨン管を通る。








●問27.小脳にみられるのはどれか。≪神経系/中枢神経≫
1.オリーブ
2.黒質
3.赤核
4.歯状核




解答
4

解説
1.オリーブは延髄の錐体の外側に位置し、中にオリーブ核が存在する。錐体外路性の運動に関与する。
2.黒質は中脳の被蓋に存在する錐体外路性の灰白質である。大脳基底核、赤核とともに意識にのぼらない骨格筋の協調的な運動に関与する。
3.赤核は中脳の被蓋に存在する錐体外路性の灰白質である。大脳基底核、黒質とともに意識にのぼらない骨格筋の協調的な運動に関与する。
4.歯状核は小脳の白質である小脳髄質に存在する灰白質である。小脳核ともいう。









●問28.神経叢で副交感神経を含むのはどれか。≪神経系/末梢神経・自律神経≫
1.頸神経叢
2.腕神経叢
3.腰神経叢
4.仙骨神経叢




解答
4

解説
副交感神経の節前ニューロンは、脳幹のいくつかの神経核と仙髄の側角に位置する。交感神経の節前ニューロンは胸髄の側角に位置し、胸髄、腰髄から起始する。その線維は前根を経由して脊髄神経に合流する。









●問29.側頭葉にみられるのはどれか。≪神経系/中枢神経・大脳≫
1.運動野
2.視覚野
3.体性感覚野
4.聴覚野




解答
4

解説
1.運動野は前頭葉の中心前回に存在する。
2.視覚野は後頭葉の内面で鳥距溝の周囲にある。
3.体性感覚野は頭頂葉の中心後回に存在する。
4.聴覚野は側頭葉の上面にある。









●問30.皮膚について正しい記述はどれか。≪人体の構造/皮膚≫
1.立毛筋は交感神経が支配する。
2.ルフィニ小体は痛覚に関与する。
3.メラノサイトは角質層に存在する。
4.アポクリン汗腺は全身の皮膚に分布する。




解答
1

解説
1.立毛筋は交感神経が支配する。
2.ルフィニ小体は触・圧覚に関与する。痛覚に関与するのは自由神経終末である。
3.メラノサイト(メラニン産生細胞)は表皮の基底層(基底細胞層)に存在し、つくったメラニン顆粒をまわりの上皮細胞に渡す。
4.アポクリン汗腺(大汗腺)は腋窩に多く、そのほか乳輪や肛門の周囲などの特定の場所に分布する。エクリン汗腺(小汗腺)は全身に広く分布する。