2015年1月9日金曜日

難経:六十九難

 『難経』:六十九難には「虚すれば其の母を補い、実すれば其の子を瀉せ」と記されている。この基準による取穴法は以下の通りである。
補法
瀉法
虚経
取穴
実経
取穴
木経
木経の水穴、水経の水穴
木経
木経の火穴、火経の火穴
火経
火経の木穴、木経の木穴
火経
火経の土穴、土経の土穴
土経
土経の火穴、火経の火穴
土経
土経の金穴、金経の金穴
金経
金経の土穴、土経の土穴
金経
金経の水穴、水経の水穴
水経
水経の金穴、金経の金穴
水経
水経の木穴、木経の木穴







例えば、肝虚の場合、「虚すれば其の母を補う」という基準に基づいて、五行相性関係で肝(木)の母にあたる腎(水)の経絡に補法を行えば、肝(木)を実することができる。この経絡選択の方法をさらに経穴の選択に援用して、五穴をその五行性格によって選び、水経の水穴を取れば、肝(木)の虚に対する補法が行える。
実際には当該経絡の五穴も、その五行性格を使って取穴するので、肝虚の場合は以下のような取穴の組み合わせとなる。
・自経脈(木経、足厥陰肝経)の母性穴(水穴、合穴)である曲泉穴
・母経脈(水経、足少陰腎経)の母性穴(水穴、合穴)である陰谷穴
 その他の組み合わせは以下の通りである。尚、心経の取穴の際には心包経の経穴を使用することがあるので、心包経の対応穴を( )内に記した。
症状
母経
自経
肝虚
陰谷
曲泉
心虚
大敦
少衝(中衝)
脾虚
少府(労宮)
大都
肺虚
太白
太淵
腎虚
経渠
復溜







 肺実の場合には、「実すればその子を瀉せ」という基準に基づいて、五行相性関係で肺(金)経の子にあたる経脈である腎(水)の経絡に瀉法を行えば、肺(金)を瀉することができる。よって、以下のような取穴の組み合わせとなる。
 ・自経脈(金経、手太陰肺経)の子性穴(水穴、合穴)である尺沢穴
 ・子経脈(水経、足少陰腎経)の子性穴(水穴、合穴)である陰谷穴
 その他の組み合わせは以下の通りである。尚、こちらも( )内に心包経の対応穴を記した。
症状
子経
自経
肝実
少府(労宮)
行間
心実
太白
神門(大陵)
脾実
経渠
商丘
肺実
陰谷
尺沢
腎実
大敦
湧泉

<参考>

2015年1月8日木曜日

六経病

 六経病は、『素問』熱論篇に基づき、後漢時代の張機が『傷寒雑病論』のなかで、傷寒、いわゆる外感病の証候と特徴を結びつけ体系化したものである。





①太陽経病
熱病は、陽の一番強い太陽経に外邪(寒邪)が、まず侵襲する。太陽経の巡る頭頂部が痛み、腰脊部が強ばる症状を起こす。
②陽明経病
次に陽明経に外邪(寒邪)が侵襲する。陽明経が主るのは肌肉であり、その経絡は鼻をはさんで目に連なっている。そのため目が痛み、鼻が乾き、安臥することができなくなる。
③小陽経病
さらに、外邪(寒邪)が少陽経に侵襲する。少陽経が主るのは胆であり、その経絡は胸脇を巡り耳を絡う。そのために胸脇痛、耳聾を起こす。
三陽経絡が病を受けても、未だに臓に侵入していないものは、発汗によって治癒しうる。





④太陰経病
病気が進行すると、太陰経が邪気を受ける。太陰経は胃中に分布し、咽喉を絡う。そのために腹中脹満し、咽喉の乾きを訴える。
⑤少陰経病
さらに深く病邪が進行して、少陰経が病を受ける。少陰経は腎を貫き、肺を絡い舌根につらなる。そのために口が乾き、舌乾により渇きを訴える。
⑥厥陰経病
最後に病気は厥陰経に達する。厥陰経は、陰器を巡り肝を絡う。そのために煩悶を起こし、陰嚢が収縮する。

<参考>

古代九鍼

 『素問』、『霊枢』には、今から約2千年前の中国で治療に用いられていた九種類の鍼具について記載されている。





①皮膚を破る鍼
鑱鍼(ざんしん)
長さ16分。頭大きく末が鋭い。
熱が頭身の皮膚にあり、あちこち動くときにその陽気(熱)を瀉し去る。
皮膚の白いところに用いてはならない。
鋒鍼(ほうしん)
(三稜鍼ともいう)
長さ16分。絮にのっとり、筒状から末が鋒となり、刃が三隅にある三つ目錐のようである。
鈹鍼(はしん)(『太素』では「ひ(金に非)鍼」)
長さ4寸。鋒の幅2分半。劔にのっとり、末が剣鋒のようになっている。
癰や大膿を切り開く。

②刺入する鍼
毫鍼(ごうしん)
長さ16分(36分説もあり)。毫毛にのっとり、尖が蚊や虻の喙(くちばし)のようになっている。
静かにゆっくり少しずつ刺し進め、目的の深さに達したらしばらく留め、寒熱や痛痹(痛み・しびれ)を取る。
員(円)利鍼
(えんりしん)
長さ16分。牛の尾にのっとり、丸くて鋭く、中程がやや太い。
急激な痹(痛み・しびれ)に深く刺してこれを取る。
長鍼(ちょうしん)
長さ7寸。オビヒモにのっとり、鋒はとがって身は薄い。
深い邪や痹を取る。
大鍼(だいしん)
長さ4寸。鋒にのっとり、つえのようで、その鋒が微かに丸い。
関節に水がたまって腫れているとき、これを瀉す。





③刺入せずに接触・摩擦する鍼
員(円)鍼
(えんしん)
長さ16分。絮にのっとり、筒状で鋒が卵のように丸い。
分肉の間(ごく浅いところ)をこすって気を瀉す。
鍉鍼(ていしん)
長さ3寸半。キビ・アワにのっとり、鋒がややとがっている。
手足末端近くの穴所の脈を按じて気を補ったり、邪を出させたりする。


<参考>

2015年1月7日水曜日

三陰三陽病

『傷寒論』に述べられている。





状態
症状
①太陽病
発病の初期
悪寒(悪風)、発熱、頭痛、項強、脈浮
②少陽病
発病後4~5日、ないし6~7日を経た時期の病態
口苦、咽乾、舌苔白、食欲不振、悪心、咳(深いところから出る)、胸脇苦満(胸苦しさ)、往来寒熱
③陽明病
発病後8~9日以上経た陽病の極期
体温が高く、全身くまなく熱感に満ち、腹実満、便秘、舌苔黄






状態
症状
④太陰病
陽明病期の後にくるもの
体力が衰し、身体冷え、腹虚満、腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状
⑤少陰病
ますます元気がなくなり、臥床してうつらうつらしている。
脈は微細で、触れにくくなる
⑥厥陰病
多くはやがて死に至る
上気して顔色は一見赤みがかっているが、下半身は冷え、咽が乾き、胸が熱く、疼き、空腹だが飲食できない。


<参考>