2015年1月5日月曜日

炎症の分類

炎症を分類すると次のようになる。
●変質性炎
●滲出性炎
 ○漿液性炎‐炎症性浮腫、カタル性炎
 ○線維素性炎‐偽膜
 ○化膿性炎‐膿
  ・膿瘍
  ・蜂巣炎、蜂窩織炎
  ・蓄膿
 ○出血性炎
 ○腐敗性炎
●増殖性炎
●特異性炎
それぞれについての詳細は以下を参照。



●変質性炎(実質性炎)
炎症の出発点になる組織傷害が、とくに前面に出て目立つ場合。実質臓器にみられることが多い。
心筋、肝臓、腎尿細管などの実質臓器
肝硬変など


●滲出性炎
液性および細胞性滲出の顕著なタイプの炎症。滲出物の特徴にしたがい、さらに漿液性、線維素性、化膿性、出血性、腐敗性などに分けられる。
漿液性炎
炎症性滲出物が、淡黄色、透明、細胞成分に乏しく、線維素成分をほとんど含まないもの。
結合組織の中にこの滲出がおきると、炎症性浮腫となる。
粘膜面に漿液性炎症がおき、漿液が流れ出る状態はカタルといわれる。
ウイルス・細菌によってももたらされるが、組織の損失をともなわないので、治癒する場合はほとんど痕跡を残さない。
マメ(熱傷の水泡や擦過により表皮間ないし、表皮下に滲出)
靴擦れ、蕁麻疹
漿液性の胸膜炎、腹膜炎、関節炎
カタル性鼻炎(風邪)
暴飲暴食等による急性胃炎(カタル性炎)
コレラの水様便
線維素性炎
滲出物中に大量のフィブリノゲンが含まれていて、局所でフィブリンが多量に析出する型。
上気道ジフテリアでは上気道粘膜が壊死に陥ったところへ、フィブリン(線維素)が析出し、偽膜を形成する。このような炎症を偽膜性炎とも呼ぶ。偽膜の中にはジフテリア菌が繁殖しており、ピンセットなどで容易に剥がすことができ、出血する。
大葉性肺炎では、治るときに線維素塊が残ると、肉芽組織で置き換えられ、肉様変化と呼ばれる呼吸面の失われた肺の部分ができる。
上気道ジフテリア(偽膜形成)
絨毛心(リウマチや尿毒症などによる)
乾性胸膜炎
大葉性肺炎
化膿性炎
滲出物に大量の好中球を含む炎症。このような滲出物が膿である。膿は黄白色、濃厚でにごっており、変性壊死に陥った好中球と組織片を含む。
化膿性炎には以下のようないくつかの型がある。
ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎双球菌など

・膿瘍
化膿性炎が組織内におこり、その部分が壊死に陥り、生じた空洞が膿で充満している状態。
急性炎症と関係が深い。
皮下膿瘍
肺、肝臓、腎臓、脳などの膿瘍

・蜂巣炎
・蜂窩織炎
 組織内に多数の好中球が散在して浸潤し、細胞間物質を広汎に融解しながら進行する化膿性炎の一種。
 連鎖球菌やブドウ球菌の毒素に含まれる基質分解酵素の働きと関連がある。
 切開しても膿は出てこない。
 連鎖球菌に汚染した鍼が皮下組織に及んだ場合にもおこりやすい。
淋病
ひょう疽
急性虫垂炎

・蓄膿
身体にある腔所に膿のたまっている状態。
副鼻腔炎は上顎洞などの副鼻腔に膿が充満しているもので、蓄膿症として知られている。
副鼻腔炎(蓄膿症)
膿胸(胸膜腔に膿)
子宮膿腫(子宮腔内に膿)
出血性炎
滲出物中に多量の赤血球が混じっている場合で、赤血球のような運動性のない大きな細胞が血管外に出るのは、血管壁の傷害が強く起こっていることで、組織障害が強烈であることも意味している。
インフルエンザ肺炎
劇症肝炎
腐敗性炎
壊疽性炎とも呼ばれる。滲出物中に腐敗菌の混合感染がおきた場合で、悪臭のあるきたない灰色ないし緑黒色の壊死組織がつくられる。
肺壊疽
壊疽性子宮内膜炎


●増殖性炎
 肉芽組織からなる炎症のこと。滲出機転がおさまってから治癒するまでの時期の炎症相をさす。しかし、起炎因子の種類によっては、はじめから滲出性性格が乏しく、増殖性病変の強いものがある。


●特異性炎
 一種の肉芽腫性炎で、炎症の性格が増殖性機能で貫かれているものをいう。多くの場合、長い慢性経過をたどり(慢性炎症)、特異的な組織像を示す肉芽腫を形成する。このような肉芽腫をつくるものには、結核、梅毒、ハンセン病(癩)、野兎病、腸チフス、サルコイドーシス、猫ひっかき病などが含まれる。
結核結節
結核は特異性炎のなかでも、数も多く最も代表的な疾患。結核結節といわれる肉芽組織(肉芽腫)をつくることが特徴。結核結節は中心が壊死に陥っており、凝固壊死の形をとり、乾酪(チーズの日本名)化とも呼ばれる。乾酪化巣を囲んでマクロファージ(類上皮細胞)の層があり、結核菌は乾酪化巣のなかで繁殖し、マクロファージに貪食される。マクロファージの一部は、何個かの細胞が融合してラングハンス巨細胞といわれる多核巨細胞をつくる。類上皮細胞層の周囲をリンパ球が取り囲んでいる。
結核(慢性または、亜急性期)
ゴム腫
梅毒の場合、中心部に壊死巣があり、周囲をマクロファージが取り囲んでいるが、一般に類上皮細胞反応は結核ほど強くない。巨細胞もときにみられる。最外層には、リンパ球、形質細胞が目立ち、線維芽細胞が取り巻いている。全体として線維形成が豊富でゴム様の弾性がある。ゴム腫と呼ばれる。
梅毒(第3期)
癩腫
ハンセン病(癩)でみられる肉芽腫。中心壊死はなく、細胞質に多数の脂肪変性に陥った類上皮細胞と巨細胞をまじえる浸潤が中心にあり、リンパ球が周辺を囲む。
ハンセン病(癩)
サルコイドーシス
結核に近似するが、中心に壊死巣がなく、類上皮細胞の集合からなる結節病変をつくる。リンパ節や肺が主に侵される臓器である。
原因不明
その他
野兎病は皮膚やリンパ腺などに結核に似た結節病変をつくる。
野兎病
 腸チフスでは、小腸などの患部にマクロファージの小集簇からなる結節病変をつくる。
腸チフス


<参考>


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