2015年3月5日木曜日

第19回 はり師・きゅう師 国家試験問題の解答と解説(解剖)

平成23年(2011年)に行われた第19回 はり師・きゅう師国家試験の中から解剖学に該当する問題の解答と解説をまとめました。








●問15体表構造について中胚葉に由来するのはどれか。≪生殖器系/発生≫
1.表皮
2.真皮
3.毛
4.爪








解答
2

解説
1.表皮は外胚葉由来である。
2.真皮は結合組織に分類され、中胚葉由来である。よってこれが正解である。
3.毛は外胚葉由来である。
4.爪は外胚葉由来である。








●問16下顎骨との間で顎関節を形成するのはどれか。≪運動器系/全身の骨格≫
1.頬骨
2.上顎骨
3.蝶形骨
4.側頭骨








解答
4

解説
顎関節は下顎骨の関節突起先端の下顎頭が側頭骨の下顎窩にはまって関節をなしたものである。関節内には関節円板が存在する。






●問17.肩甲骨に関する記述で正しいのはどれか。≪運動器系/全身の骨格≫
1.関節窩は上角にある。
2.肩甲切痕を腋窩神経が通る。
3.肩峰は体表から触れることができる。
4.鳥口突起に大胸筋が停止する。









解答
3

解説
1.肩甲骨は逆三角形をした扁平な骨である。それぞれの頂点を上角・下角・外側角というが、関節窩は外側角の肥厚した部分である。上角は上側の頂点の部分である。
2.肩甲切痕は肩甲上神経を通す。
3.肩峰は肩甲棘が外上方に突き出た部分で体表から明瞭に触れる。よってこれが正解である。
4.大胸筋の起始は鎖骨内側1/2、胸骨と肋軟骨、腹直筋鞘であり、停止は上腕骨大結節稜である。烏口突起に停止するのは小胸筋である。







●問18咀嚼筋で下顎骨を前方に移動させる働きがあるのはどれか。≪運動器系/頭頸部≫
1.外側翼突筋
2.内側翼突筋
3.咬筋
4.側頭筋










解答
1

解説
1.外側翼突筋は下顎骨の前方移動に作用する。よってこれが正解である。
2.内側翼突筋は下顎骨の挙上、左右移動に作用する。
3.咬筋は下顎骨の挙上に作用する。
4.側頭筋は下顎骨の挙上、後方移動に作用する。







●問19脊柱起立筋に属するのはどれか。≪運動器系/体幹≫
1.頭長筋
2.腸肋筋
3.腸骨筋
4.大腰筋








解答
2

解説
脊柱起立筋は腸肋筋、最長筋、棘筋のことをいう。
1.頭長筋は椎前筋の一つであり、下位の頸椎横突起から起こり後頭骨に停止する。
2.腸肋筋は脊柱起立筋の一つであり、仙骨の背面、下部腰椎棘突起、腸骨稜から起こり、肋骨に終わる。
3.腸骨筋は股関節屈筋の一つであり、腸骨窩から起こり、大腿骨の小転子に停止する。
4.大腰筋は股関節屈筋の一つであり、全腰椎の肋骨突起、第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板から起こり、大腿骨の小転子に付着する。








●問20下肢の筋について正しい記述はどれか。≪運動器系/下肢≫
1.梨状筋の腱は小坐骨切痕を通る。
2.半腱様筋の腱は膝窩の内側を通る。
3.短腓骨筋の腱は内果の後ろを通る。
4.下腿三頭筋の腱は足根管を通る。











解答
2

解説
1.梨状筋は大坐骨切痕と仙結節靭帯、仙棘靭帯によって縁どられた大坐骨孔を貫通し、大坐骨孔に梨状筋上孔と梨状筋下孔をつくる。
2.半腱様筋の腱は膝窩の内側を通り、脛骨粗面の内側に付着する。よってこれが正解である。
3.短腓骨筋の腱は外果の後方を通り、第5中足骨粗面に付着する。
4.下腿三頭筋の腱はアキレス腱を形成し、踵骨隆起に付着する。足根管は通らない。









●問21気管について正しい記述はどれか。≪呼吸器≫
1.輪状軟骨の下縁に始まる。
2.食道の後方にある。
3.第2胸椎の高さで左右の気管支に分岐する。
4.軟骨が全周を取り囲む。











解答
1

解説
1.気管は第6頸椎の高さで、喉頭の輪状軟骨の下から垂直に下降する長さ1013cnで直径が約2cmの管である。よってこれが正解である。
2.気管は食道の前方に位置する。
3.気管は胸腔に入ると神蔵の上後方(第5胸椎の高さ)で左右の気管支に分かれる。
4.気管の壁は約20個の馬蹄形の気管軟骨が積み重なってできているが、後壁は膜性壁といい、軟骨を欠き、平滑筋と粘膜だけになる。









●問22消化管で腹膜垂がみられるのはどれか。≪消化器≫
1.十二指腸
2.回腸
3.横行結腸
4.直腸











解答
3

解説
結腸は数cmおきに腸にひもを回して締め付けたようなくびれがあるところから結腸の名がある。このくびれによりつくられた結腸壁のふくらみを結腸膨起と呼ぶ。結腸の表面にはまた、縦に走る幅1cmほどの結腸ヒモというすじが3本、等間隔に並ぶのがみられる。この結腸ヒモには腹膜に包まれた小さな腹膜垂という脂肪の袋がぶら下がる。これらの3つの特徴は結腸を小腸から区別する目印となる。









●問23心臓について正しい記述はどれか。≪循環器≫
1.心尖は第2肋間の高さに位置する。
2.右房室弁は僧帽弁という。
3.心臓の静脈血は上大静脈に注ぐ。
4.洞房結節は上大静脈の開口部に位置する。












解答
4

解説
1.心尖部の位置は左の第5肋間(第5肋骨の下)で、鎖骨中線付近に位置する。
2.右房室弁は三尖弁と呼ばれる。左房室弁が僧房弁、もしくは二尖弁である。
3.心臓の静脈血の大半は心臓後面の冠状溝を走る太い冠状静脈洞に集まり、右心房の後面に注ぐ。
4.洞房結節は右心房の上大静脈開口部に位置する。周期的な興奮が自動的に発生し、心臓拍動の起点となる。よってこれが正解である。












●問24静脈とそれが直接注ぐ静脈との組合せで正しいのはどれか。≪循環器/静脈≫
1.奇静脈 ――――― 腕頭静脈
2.精巣静脈 ―――― 内腸骨静脈
3.内頸静脈 ―――― 上大静脈
4.上腸間膜静脈 ―― 門脈











解答
4

解説
1.奇静脈は後胸壁の静脈や食道静脈、気管支静脈などの血液を集めながら、上大静脈の後面に注ぐ。
2.右の精巣静脈は右腎静脈よりも下方で下大静脈に直接注ぎ込む。左精巣静脈は左腎静脈へて、下大静脈へとつづく。
3.内頸静脈は鎖骨下静脈と合流し、腕頭静脈となって上大静脈へと注ぐ。
4.上腸間膜静脈は脾静脈や下腸間膜静脈などとともに門脈を形成し、胃腸や膵臓、脾臓から集めた血液を肝臓へと送る。よってこれが正解である。







●問25リンパ系について正しい記述はどれか。≪循環器/リンパ系≫
1.舌扁桃はワルダイエルの咽頭輪を構成する。
2.胸腺はBリンパ球を産生する。
3.脾臓は腹膜後器官の1つである。
4.集合リンパ小節は空腸で発達する。












解答
1

解説
1.咽頭内腔を取り囲むように輪状に配列して、口や鼻から侵入しやすい細菌などに対応する咽頭扁桃・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌扁桃をワルダイエルの咽頭輪と呼ぶ。よってこれが正解である。
2.胸腺は全身のリンパ系組織に先がけて発生する第一次リンパ性器官である。骨髄など造血器官で生まれたTリンパ球前駆細胞が胸腺に侵入し、ここで成熟してTリンパ球となる。Tリンパ球の頭文字Tは胸腺(Thymus)のTであり、胸腺由来のリンパ球であることを意味する。Bリンパ球は、骨髄(Bone marrow)由来のリンパ球である。
3.脾臓は腹腔の左上部で胃の後方にあり、横隔膜に接する。表面を腹膜で覆われる腹腔内臓器である。
4.集合リンパ小節(パイエル板)は小腸後半の回腸にてとくに発達している。








●問26中枢神経の部位と機能との組合せで正しいのはどれか。≪神経系/中枢神経≫
1.視床―――内分泌機能の調節
2.中脳―――体温調節の中枢
3.小脳―――平衡機能の調節
4.延髄―――情動行動の中枢












解答
3

解説
1.視床の機能は、脳に入る感覚情報の中継点である。全身の皮膚感覚や深部知覚の線維、小脳から起こる線維、聴覚や視覚の線維などがいったん視床に集められ、新しいニューロンに乗り換えて大脳皮質のそれぞれの中枢に送られる。内分泌機能の調整は視床下部の機能である。
2.中脳には眼球運動に関する脳神経核などが含まれるので、眼球運動反射に関わるほか、立ち直り反射の中枢でもある。体温調整に関わるのは視床下部である。
3.小脳は大脳からの運動指令を受けて、体位や平衡などの身体のあらゆる情報を照合して運動が円滑に行われるように調整する。 よってこれが正解である。
4.延髄には循環・呼吸・嘔吐・嚥下・唾液分泌に関わる中枢が存在する。情動行動の中枢は視床下部である。









●問27脊髄神経について正しい記述はどれか。≪神経/末梢神経≫
1.全部で25対ある。
2.脊髄神経節は前根に存在する。
3.第5頸神経は第4頸椎の下から出る。
4.腰神経には副交感神経線維が含まれる。













解答
3

解説
1.脊髄神経は、頸神経8対、胸神経12対、腰神経5対、仙骨神経5対、尾骨神経1対の合計31対からなる。
2.脊髄神経節は後根の途中に存在する。感覚ニューロンの細胞体が存在する場所である。
3.頸神経は後頭骨と第1頸椎(環椎)の間から第1頸神経が出て、第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)の間から第2頸神経がでる。このように各頸椎の上からそれに対応する各頸神経がでるので、第5頸神経は第4頸椎と第5頸椎の間からでる。よってこれが正解である。
4.交感神経の節前ニューロンは胸髄、腰髄から起始するので、腰神経には交感神経線維が含まれる。副交感神経のニューロンは脳幹や仙髄から起始する。








●問28上肢の皮膚領域と分布する神経との組み合わせで正しいのはどれか。≪神経/末梢神経≫
1.上腕の後面―――橈骨神経
2.前腕の外側半――尺骨神経
3.前腕の後面―――正中神経
4.小指球―――――筋皮神経













解答
1

解説
1.上腕の後面に皮枝をだすのは橈骨神経である。よってこれが正解である。
2.前腕の外側面に皮枝をだすのは筋皮神経である。尺骨神経は、手掌側では薬指を、手背側では中指を境とした尺側(小指側)に皮枝をだす。
3.前腕の後面に皮枝をだすのは橈骨神経である。正中神経は、手掌で薬指を境とした橈側(母指側)に皮枝をだす。
4.小指球に皮枝をだすのは尺骨神経である。筋皮神経は前腕の外側面に皮枝をだす。






●問29平衡聴覚器について正しい記述はどれか。≪感覚器≫
1.鼓膜の振動は最初にアブミ骨に伝わる。
2.卵形囊は前庭にある。
3.蝸牛管内の振動は鼓室階から前庭階へと伝わる。
4.半規管は身体の傾きを感知する。














解答
2

解説
1.鼓膜の振動はツチ骨に伝わり、順にキヌタ骨、アブミ骨へと伝わっていく。
2.卵形囊や球形囊は前庭に存在し、身体の傾きおよび直進する方向とその加速度を感じる。よってこれが正解である。
3.蝸牛管内の振動は前庭階から鼓室階に伝わる。
4.半規管は身体の回転運動の方向と加速度を感じる。








●問30感覚受容器と神経との組合せで正しいのはどれか。≪感覚器≫
1.平衡斑 ――― 舌咽神経
2.味蕾 ―――― 舌下神経
3.網膜 ―――― 眼神経
4.コルチ器 ―― 蝸牛神経
















解答
4

解説
1.平衡班は前庭にある球形囊や卵形囊の中に存在する感覚装置である。内耳神経のなかの前庭神経に感覚を伝える。
2.味蕾は味覚の受容器である。感受された刺激は舌の前2/3は顔面神経に、後ろ1/3は舌咽神経によって伝えられる。
3.網膜で感受された視覚刺激を伝えるのは視神経である。眼神経は三叉神経の第一枝であり、顔面上部の感覚を伝える。
4.コルチ器は蝸牛に存在する感覚装置であり、音を感受する。内耳神経のなかの蝸牛神経によって感覚が伝わる。よってこれが正解である。








<参考>

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