足の陽明胃経は、手の陽明大腸経の脈気を受けて、鼻翼外方に起こり、鼻根部で足の太陽膀胱経と交わり、鼻の外側を下り、上歯に入り、かえり出て口をはさみ唇をめぐり、オトガイで交わる。戻って、顔面動脈拍動部［大迎］、下顎角、耳前から髪際をめぐり、額中央に至る。
［大迎］から分かれた支脈は、総頸動脈拍動部［人迎］、気管をめぐり、大鎖骨上窩に入り、横隔膜を貫いて胃に属し、脾を絡う。
本経は、大鎖骨上窩より、胸部では前正中線外方4寸を、腹部では前正中線外方2寸を下り、幽門部に起こり腹部を下る支脈と、鼡径部の大腿動脈拍動部［気衝］で合流し、大腿前外側、膝蓋骨、下腿前面を下って、足背から足の第2指外側端に終わる。
膝下3寸から分かれた支脈は、下腿前面を下り、足の第3指外側端に出る。
足背で分かれた支脈は、足の第1指内側端に至り、足の太陰脾経につながる。
ST1 承泣（しょうきゅう）
部位：顔面部。眼球と眼窩下縁の間。瞳孔線上。
取り方：正視させて、瞳孔を通る垂線と眼窩下縁との交点に取る。
解剖：眼輪筋＜筋枝＞顔面神経（側頭枝・頬筋枝）、≪皮枝≫上顎神経（三叉神経第2枝）、［血管］眼窩下動脈
ST2 四白（しはく）
部位：顔面部。眼窩下孔部。
取り方：正視させて、承泣の下方で、骨が陥凹しているところに取る。
※眼窩下神経の出る部にあたる。
解剖：眼輪筋＜筋枝＞顔面神経（側頭枝・頬筋枝）、≪皮枝≫上顎神経（三叉神経第2枝）、［血管］眼窩下動脈
ST3 巨髎（こりょう）
部位：顔面部。瞳孔線上。鼻翼下縁と同じ高さ。
取り方：正視させて、瞳孔を通る垂線と、鼻翼下端から横にひいた線との交点に取る。
解剖：小頬骨筋＜筋枝＞顔面神経（頬筋枝）、≪皮枝≫上顎神経（三叉神経第2枝）、［血管］眼窩下動脈・顔面動脈の枝
ST4 地倉（ちそう）
部位：顔面部。口角の外方4分（指寸）
取り方：口角の外方4分。鼻唇溝あるいは鼻唇溝の延長線上に取る。
解剖：口輪筋＜筋枝＞顔面神経（頬筋枝・下顎縁枝）、≪皮枝≫上顎神経（三叉神経第2枝）・下顎神経（三叉神経第3枝）、［血管］顔面動脈
ST5 大迎（だいげい）
部位：顔面部。下顎角の前方。咬筋付着部の前方陥凹部。顔面動脈上。
取り方：下顎角から下顎体に沿って指を前方に進め、顔面動脈拍動部に取る。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、咬筋＜筋枝＞下顎神経、≪皮枝≫下顎神経（三叉神経第3枝）、［血管］顔面動脈
ST6 頬車（きょうしゃ）
部位：顔面部。下顎角の前上方1横指（中指）。
取り方：下顎角の前上方で、歯を噛み締めると咬筋が緊張し、力を抜くと陥凹するところに取る。
解剖：咬筋＜筋枝＞下顎神経、≪皮枝≫下顎神経（三叉神経第3枝）・大耳介神経、［血管］浅側頭動脈
ST7 下関（げかん）
部位：顔面部。頬骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部。
取り方：頬骨弓下縁中点と下顎切痕との間。口を閉じれば深い陥凹ができ、口を開けば下顎骨関節突起が前に移動して陥凹がなくなるところに取る。
解剖：咬筋・外側翼突筋＜筋枝＞下顎神経、≪皮枝≫下顎神経（三叉神経第3枝）、［血管］顔面横動脈
ST8 頭維（ずい）
部位：頭部。額角髪際の直上5分。前正中線の外方4寸5分。
取り方：額角髪際の後方5分。神庭（督脈）の外方4寸5分に取る。
解剖：前頭筋＜筋枝＞顔面神経（側頭枝）、≪皮枝≫眼神経（三叉神経第1枝）・上顎神経（三叉神経第2枝）、［血管］浅側頭動脈
ST9 人迎（じんげい）
部位：前頸部。甲状軟骨上縁と同じ高さ。胸鎖乳突筋の前縁。総頸動脈上。
取り方：甲状軟骨上縁の外方で胸鎖乳突筋の前縁。総頸動脈拍動部に取る。
※扶突（大腸経）の内方にあたる。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、≪皮枝≫頸横神経、［血管］総頸動脈
ST10 水突（すいとつ）
部位：前頸部。輪状軟骨と同じ高さ。胸鎖乳突筋の前縁。
取り方：人迎の下方で胸鎖乳突筋の前縁。輪状軟骨の高さに取る。
※胸鎖乳突筋をはさんで、天鼎（大腸経）と同じ高さにあたる。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、胸鎖乳突筋＜筋枝＞副神経・頸神経叢の枝、≪皮枝≫頸横神経、［血管］総頸動脈
ST11 気舎（きしゃ）
部位：前頸部。小鎖骨上窩で鎖骨胸骨端の上方。胸鎖乳突筋の胸骨頭と鎖骨頭の間の陥凹部。
取り方：鎖骨内端の上部で、胸鎖乳突筋の二頭間に取る。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、胸鎖乳突筋＜筋枝＞副神経・頸神経叢の枝、≪皮枝≫鎖骨上神経、［血管］総頸動脈
ST12 欠盆（けつぼん）（肺尖部付近の為、刺鍼時に注意を要する）
部位：前頸部。大鎖骨上窩。前正中線の外方4寸。鎖骨上方の陥凹部。
取り方：前正中線外方4寸の乳頭線上で鎖骨の上方陥凹中に取る。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、前斜角筋・中斜角筋＜筋枝＞頸神経前枝、≪皮枝≫鎖骨上神経、［血管］鎖骨下動脈
※肺尖部に近い欠盆をはじめ、胸背部の経穴の刺鍼には気胸を起こさないように注意を要する。
ST13 気戸（きこ）
部位：前胸部。鎖骨下縁。前正中線の外方4寸。
取り方：鎖骨の下縁と乳頭線との交点に取る。
※胃経の胸部の経穴は、前正中線外方4寸、乳頭線上にあたる。
解剖：広頸筋＜筋枝＞顔面神経（頸枝）、大胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、鎖骨下筋＜筋枝＞鎖骨下筋神経、≪皮枝≫鎖骨上神経、［血管］鎖骨下動脈
ST14 庫房（こぼう）
部位：前胸部。第1肋間。前正中線の外方4寸。
取り方：華蓋（任脈）から第1肋間に沿って外方4寸。乳頭線上に取る。
解剖：大胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、≪皮枝≫鎖骨上神経・肋間神経（前皮枝）、［血管］胸肩峰動脈・肋間動脈
ST15 屋翳（おくえい）
部位：前胸部。第2肋間。前正中線の外方4寸。
取り方：紫宮（任脈）から第2肋間に沿って外方4寸。乳頭線上に取る。
解剖：大胸筋・小胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝・外側皮枝）、［血管］胸肩峰動脈・肋間動脈
ST16 膺窓（ようそう）
部位：前胸部。第3肋間。前正中線の外方4寸。
取り方：玉堂（任脈）から第3肋間に沿って外方4寸。乳頭線上に取る。
解剖：大胸筋・小胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝・外側皮枝）、［血管］胸肩峰動脈・肋間動脈
ST17 乳中（にゅうちゅう）
部位：前胸部。乳頭中央。
取り方：膻中（任脈）から第4肋間に沿って外方4寸。乳頭線上。乳頭部中央に取る。
解剖：大胸筋・小胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝・外側皮枝）、［血管］胸肩峰動脈・肋間動脈
ST18 乳根（にゅうこん）
部位：前胸部。第5肋間。前正中線の外方4寸。
取り方：第5肋間に沿って前正中線から外方4寸。乳頭線上に取る。
※女性では乳房下縁の中点にあたる。
解剖：大胸筋＜筋枝＞内側・外側胸筋神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝・外側皮枝）、［血管］胸肩峰動脈・肋間動脈
ST19 不容（ふよう）
部位：上腹部。臍中央の上方6寸。前正中線の外方2寸。
取り方：天枢の上方6寸。巨闕（任脈）の外方2寸で腹直筋中に取る。
※胃経の腹部の経穴は前正中線外方2寸、前正中線と乳頭線との中線上にあたる。
解剖：腹直筋＜筋枝＞肋間神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝）、［血管］肋間動脈・上腹壁動脈
ST20 承満（しょうまん）
部位：上腹部。臍中央の上方5寸。前正中線の外方2寸。
取り方：天枢の上方5寸。上脘（任脈）の外方2寸。腹直筋中に取る。
解剖：腹直筋＜筋枝＞肋間神経、≪皮枝≫肋間神経（前皮枝）、［血管］上腹壁動脈
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